同じシナリオをオンラインとオフラインで回してみて、「あれ?オンラインだと妙に流れが悪いな」と感じたことはありませんか?
実はマダミスにおけるハンドアウト(HO)は、媒体によって最適解がまったく違います。紙とPDFは単に「フォーマットの違い」ではなく、ユーザーインターフェースとしての性質そのものが別物 です。今回は、個人開発者としてのUI/UXの視点を絡めつつ、オン/オフでのHO設計を整理します。

紙とデジタルは「読み方」がそもそも違う
UI/UX的な観点で見ると、紙とデジタルでは、人間の情報処理の仕方が次のように違います。
- 紙:全体を一覧できる、気になる箇所に戻れる、書き込める
- デジタル:検索できる、コピペできる、スクロールで読む
この特性を踏まえずに、紙用のHOをそのままPDFにしてしまうと、オンラインプレイヤーは 「スクロールし続けないと全体が把握できない」 状態になります。逆に、デジタル前提で作った情報量を紙に印刷すると、A4数枚にわたる長大な読み物 になってしまいます。
オフライン(紙)向けHOの設計ポイント
紙で渡すHOには、紙ならではの強みがあります。
- 1枚に収めることを最優先にする:重要情報はA4片面で完結させる
- 視覚的階層を強めに作る:見出し・太字・罫線を積極的に使う
- 余白に「書き込む前提」を作る:メモ欄を用意する
- 紙質や色で「世界観」を伝える:クラフト紙、色上質紙などの選択
私は以前、紙で渡すHOに 裏面を「真っ白なメモ欄」 として残したことがあります。プレイヤーが自分で推理を書き込んだり、キャラ同士の関係図を走り書きしたりする姿は、紙ならではの体験でした。
オンライン(デジタル)向けHOの設計ポイント
デジタルで渡すHOは、画面サイズとスクロール負荷を常に意識する必要があります。
- スマホでも読める文字サイズ・行間にする
- 重要情報は冒頭に、背景情報は下部に(スクロール前提)
- 見出しごとにセクションを明確に分け、リンクで飛べるようにする
- 画像は軽量化し、通信環境が弱い人にも配慮する
特に重要なのが、「議論中に参照される情報」を冒頭に集中配置する ことです。紙なら1枚を俯瞰できますが、デジタルは議論中にスクロールで探す時間が発生します。この「探す時間」は没入感の大敵です。

「情報の配り方」もUIで変わる
ハンドアウト本体だけでなく、配布タイミングと配布手段 もUI/UXの一部です。
- 紙:開始前に手渡し、プレイ中は机の上に出しっぱなし
- デジタル:開始前にPDFを送付、Discordのピン留めなど 常に見える位置に置く工夫
- 追加情報:紙なら封筒、デジタルならDM(ダイレクトメッセージ)で順次開示
私がオンラインで一番やらかしたのは、追加情報をボイスチャンネル全体で送ってしまい、本来そのキャラにしか届かない情報が チャットログとして全員の履歴に残った 事件でした。以来、追加情報の配布経路は事前に厳密に設計しています。
「密談」のUIは大きく変わる
密談フェーズは、オン/オフで体験が最も大きく変わる要素です。
- オフラインの密談:物理的に席を立って別室に移動 する
- オンラインの密談:別ボイスチャンネルに移る
オンライン密談は、対面の「ドアを閉める音」のような 物理的な儀式感 ** がありません。なので私は、オンラインでの密談フェーズでは、「密談BGMの切り替え」** や 「チャンネル入室のアナウンス音」 などを意図的に演出して、「別空間に移った」という感覚を補うようにしています。
「同じシナリオのオン/オフ両対応版」を作るなら
オンとオフの両方で回すシナリオを作るなら、一つのHOを両方に使い回そうとしない のが鉄則です。
- コア情報を先に決める
- それを紙用レイアウトに展開するバージョン
- デジタル用レイアウトに展開するバージョン
を別々に用意します。少し手間はかかりますが、同じシナリオでも「紙版」「デジタル版」で体験の質が揃います。
まとめ
オンラインとオフラインでは、ハンドアウトの「UI/UX」そのものが異なります。
紙は一覧性と書き込み性、デジタルは検索性とスクロール負荷。それぞれの特性を理解して、HO本体・配布タイミング・密談の演出までを別々に設計する。そうすることで、どちらの媒体でもストレスなく物語に没入できるマダミスが作れます。