個人開発で何かを作って世に出そうとするとき、「大きな市場は強者しかいない、かといってニッチ過ぎても食べていけない」というジレンマを感じたことはありませんか?
私はマダミスGM向けのサンプラー「GMApp」、音声編集アプリ「OtoCanvas」といったツールを個人でリリースしてきた中で、ニッチ市場ならではの需要と課題 をかなり体感しました。今回は、個人開発者としての視点から、マダミス界隈にツールを投入して見えてきたことをまとめます。

ニッチ市場の需要は「深くて狭い」
まずマダミスGM向けのツール市場は 「ユーザー数は少ないが、困りごとが具体的で深い」 という性質があります。
- 使う場面が限定されている(セッション中・準備中)
- 困りごとが物理的に明確(音量バランス、タイムキープ、素材管理)
- 使う人が「自分で解決したいタイプ」が多く、ツールへの感度が高い
大きな市場のように「ふわっとした便利さ」では選ばれません。代わりに、「この一点の課題を解決してくれる」 という明確な訴求があれば、確実に届きます。
実際に開発して気づいた課題
ツールを作って出してみて、自分の想像と違った部分もたくさんありました。
1. ユーザーの環境がバラバラすぎる
同じ「GM向け」と言っても、対面かオンラインか、iOSかAndroidか、Discord派か独自派か、で要件が全然違います。一本のツールで全環境に最適解を出すのは不可能 だと早々に痛感しました。
2. 「無料でできる」アプリへの期待値が高い
ニッチ市場ほど、「個人開発者が趣味で作って無料公開する」 文化が根付いています。有料にしたときの心理的ハードルが思っていた以上に高く、価格設定はかなり悩みどころでした。
3. アップデートの期待値も高い
ユーザーとの距離が近いため、機能追加要望がSNSで直接届きます。うれしい反面、ロードマップを作らないと振り回される側面もあります。

「作って終わり」にならない文化
ニッチ市場のもう一つの特徴は、ユーザーとの関係が長く続きやすい ことです。
- リリース後もユーザーがSNSで感想を書いてくれる
- イベントや卓で直接使っている姿を見られる
- 改善要望が具体的な「使用シーン」込みで届く
大きな市場だと、ユーザーは「使ったけど合わなかった」で黙って離れていきます。ニッチ市場では、使わなくなる理由まで親切に教えてくれる 人が多いです。これは個人開発者にとっては本当にありがたい環境です。
マネタイズの現実
売上の話もしておきます。
「個人開発で生活費を丸ごと賄うレベル」に到達するのは、マダミス界隈のツールだけでは厳しい です。ユーザーの絶対数が限られているためです。
一方で、
- アプリの収益
- シナリオ制作の収益
- マダミス関連の記事・寄稿
- イベントやセミナー
といった 「周辺活動すべての合算」 で見ると、十分意味のある規模になってきます。ニッチ市場のツール作りは、「単体でのマネタイズ」ではなく「自分のポジション作りの一部」として位置づけるのが現実的だと感じています。
個人開発者として大事にしている3つのスタンス
ニッチ市場でツールを作り続ける中で、自分なりに大事にしているスタンスを3つ書き残しておきます。
1. 自分もそのユーザーであり続ける
自分がGMとして困ったことをツールにする。これが最大の差別化です。「ユーザー視点」はリサーチでは手に入りません。
2. 小さく出して、反応を見ながら磨く
最初から完成品を目指さず、60%の出来でリリースしてユーザーの声で磨き込む。自作シナリオと同じアプローチです。
3. 「作品」としての矜持を捨てない
売れる/売れないだけで判断すると、ニッチ市場では心が折れます。自分が欲しくて作った、というコアを手放さないこと が長く続ける秘訣です。
まとめ
ニッチ市場は、狭いからこそユーザーとの距離が近く、課題も具体的で、作りがいのある場所です。
個人開発者がマダミス界隈にツールを投入するなら、自分もユーザーであり続けること、小さく出して磨くこと、作品としての矜持を捨てないこと。この3つを握りしめていれば、たとえ小さな規模でも、自分のためにも誰かのためにも意味のある開発を続けられます。
この記事を読んで「自分もマダミス向けの何かを作ってみたい」と思った方がいたら、一度、自分が一番困っている一点 から手を動かしてみてください。世界はそのツールを、たぶん静かに待っています。